ちくちく編むごもんちん

編み物の記録とその他雑感

夢の中の隣席は

 

飛行機なんて久しく乗っていません。
だから、自分が飛行機に乗っている様子を俯瞰して、"ああ、これは夢だ"とすぐ分かりました。

どこからどこへ向かっているのかすら分からないまま、しばらく座ったままでいると、隣に見覚えのある人が座りました。
以前働いていた会社で、営業をしていた中堅社員でした。
部署も職種も違ったため、ほとんど関わりは無く、言葉を交わした記憶はあるけれど、何を話したか思い出すことができません。
さわやかで、活発な、いかにも"営業職"の、仕事のできる人でした。
内気な自分とは対照的で、この人を見かける度に、こういう人が組織でうまくやっていける人なんだろうなと考えていました。

その人はこちらを見ることなく、ただ前を向いて微笑んでいました。
順風満帆に働いているように見えたけれど、表面的には見えないゴタゴタが、その人の周りにあったことを、後々知りました。
その人はどういう気持ちで働いていたのだろうかと想像してみるけれど、本当のところは分かりません。

 

私は会社で働くスピードや慣例についていけず、心身を壊してしまって仕事を辞めざるを得ない状況になってしまいました。
鈍くて不安症気味の人間とって、ストレスフルな仕事は、とても辛い。
周りに迷惑をかけて辞めてしまった自覚があって、今も心苦しい気持ちを抱えています。
要領や物覚えが悪くて馬鹿にされることも多く、働いていた頃の自分を認めることは難しいです。
それでも、笑って働いていた瞬間はあったなと思うのです。
仕事が上手くいったときや仕事とは無関係の他愛もない世間話をしているときなど、笑っていた自分がいたのは確かです。
(それに、厚生年金に加入できていたのが地味に嬉しい。将来、無事に貰えるかは分からないけれど…)


会社を辞めて、しばらくしてから編み物を始めました。
誰のためでもなく、自分のためにする編み物は、自分自身のペースで編み進めることが出来るので心地いいです。
編むのが遅かったり、思い通り編むことができなかったりと、歯がゆい思いは、いつも付いてまわってくるけれど。

 

夢の中で隣り合ったあの人が、今の編み物をしている自分を見て、どう思うかなんて、これまた分かるはずもありません。
あの人のように、真っ直ぐ前を見据えて微笑みながら…なんてことは出来そうにないけれど、編む喜びと上手く編めない悔しさとを、交互に噛み締めながら、編み続けることしか出来そうになさそうです。

 

「今の痛みや苦しみが、どうか消えますように」

「すてきなものが出来上がりますように」

「あの人を含め、お世話になった方々が平穏な日々を過ごしていますように」

 

などと、取り留めのないことを、祈りながら編みたいです。